20161228茨城県北部の地震の気象庁発表へ違和感をもった人へ(余震、発震機構、震源球)

2019/04/29

2016年12月28日(水)21:38、深さ11km、M6.3の地震が茨城北部を襲いました。
最大震度は高萩市で6弱。
寒さ厳しい夜に、住民の方々は避難を余儀なくされました。

同日23:45の気象庁発表では、「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災:以下、3.11)の余震」とのことでした。

Solid Earth Channelを訪れてくださるマニアックなアナタなら、
「ん?3.11は海溝型地震。今回の地震は内陸なのに余震?」
と違和感を覚えたのではないでしょうか?

気象庁の定義で余震とは、
「比較的大きな地震が発生したあとにその近くで起きる、最初の地震より小さな地震」
です。

確かに3.11の破壊域は岩手沖から茨城沖とやたらと広範囲でしたので、
「その近くで」といわれると、今回は明らかに近い場所で起きました。

ですが、「なぜ内陸の地震なのに?」という疑問はまだ残ります。

こちらをご覧ください。
これは、気象庁が12月28日23:45に発表した
【「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第80報)-平成28年12月28日21時38分頃の茨城県北部の地震-】
の一部抜粋です。
3.11の余震域

斜めになった長方形が、3.11の余震域です。
余震域とは気象庁の定義では、「余震の起きる場所」です。

今回の地震は、確かにこの斜めになった長方形の枠内に収まりますので、
余震であったということになります。

でも、やはりまだ「海溝型地震と内陸の地震は違うのでは?」
という疑問が残ります。

気象庁は、余震の定義として「本震と同じ発震機構」とは一言も述べていません。
つまり、本震が海溝型地震のとき、余震が海溝型である必要はないということです。

ところで、発震機構とはなんでしょうか?
発震機構とは、地震を起こした断層は、どういう角度でどういう向きに動いたか、
というものです。

こちらをご覧ください。先に挙げた気象庁資料と同一のものからの抜粋です。
20161228震源球

地震業界に特有の図なのですが、このスイカのようなボールを「震源球」といいます。
ここにはたくさんの情報が詰め込まれています。

まず、この図を見ただけで、断層の動きが左ズレか、右ズレか、逆断層か、正断層かが一発で分かります。
気象庁の図解を引用すると、こうなります。
発震機構図解

今回は、驚くことに(後述)正断層型だったのですが、どちら側が上がってどちら側が落ちたのかを見るには、
球の中に点在する小さな●と○をみます。
●がたくさんあるほうが上がった方で、○がたくさんあるほうが落ちた方です。
そして球の傾きですが、すべった断層面がどの方向を向いているかを示します。
スイカを切ったような切り口は、すべった断層面の地表から地下に向けての傾きを示します。

地震はなまずが起こしているワケではないことがかがくで明らかになっている今、
地震大国に住む日本人なら、この震源球はぜひ「見てすぐ分かるもの」に
なってもらいたいです。
なまず

さて最後に「驚くことに正断層型」と述べた件です。

3.11直後は、飛び跳ねた陸側の地盤がズルズルと東方向に伸ばされていたので、
正断層型の地震が起きてもおかしくない状況でした。
実際、2011年4月11日に福島県の井戸沢断層などがM7クラスの正断層型の地震を起こしました

ところが今は、以下に示す国土地理院のGPS観測結果からもわかるとおり、
東に引っ張られるのではなく、従前どおりの東西圧縮型(陸地が東から押されている)です。
2016.11GPS観測結果

地下の力の具合の理解はやはり、一筋縄ではいかないものです。