有珠山へ観光に行く人、必見!

2019/04/29

有珠山といえば、
洞爺湖サミットの会場として使われた
あの美しいウィンザーホテル洞爺のすぐそばです。
北海道の、道東ですね。
観光でいらっしゃる方がほとんどでしょうか。
そもそも、洞爺湖温泉町は有名な観光地ですからね。
とにかく、洞爺湖へいらっしゃる方は、
もちろんその周辺の、壮瞥伊達、虻田等にいらっしゃる方も、
まずは、この記事の写真だけでも見てください。
きっと、現地に着いたとき、
「こんな災害にあった町が、よくここまで復活したなぁ」
と、ただの観光だけでない、別の思い出も作れることでしょう。
さて、有珠山
記憶にある方のほうが少ないと思いますが、
2000年3月、噴火しました。
なぜ少ないかって?
それは、別の機会におはなしします。
最近、ウィンザーホテル洞爺のCMが放送されてます。
あの辺りの色彩豊かなきれいな景色や
たくさん残る自然の姿は、
まるでそこの澄んだ空気を吸っているかのように
容易に想像できることでしょう。
そんな地で、です。
火山が活動を始めました。
美しい景色に似つかわしくない、
灰色で重々しく、悪意さえ感じるような姿の大きな噴煙が、
毎日のように太く高く洞爺の空を昇ります。
その、不快な固まりが上昇し続ける様は、
多くの方がメディアで見ているはずです。
有珠噴煙
有珠山がまいにち”毒”を吐き出せば、
町は火山灰だらけです。
だらけ、なんて生やさしいものじゃありません。
火山灰が、分厚い布団となって
町中を覆い尽くした状態です。
その様子は、前回の投稿をご参考。
有珠山観測隊だった筆者は、
噴火約1ヶ月後に現地入りしました。
今からちょうど10年前。
日付も同じ、4月25日のこと。
自衛隊の装甲車がそこかしこを走り、
警察は行く手を阻むように、
有珠山へ通じるすべての道にバリケードを張る。
行政が定めた「これ以上は危険」な地帯に
ぜったい人を入れないよう、厳しく見張ってるのです。
有珠装甲車
その、危険地帯に、
警察から通行許可証をもらった車は
筆者たち観測隊を乗せて慎重に進みます。
水が混ざって、作りたてのコンクリート化した火山灰の上を、
ズルッ、ズルッと何度も滑りながら進みます。
確か四駆で走っていたはずでしたが、
まったく安定しません。
湖側に傾斜した道路だったためか、
気づくと湖側に流されているような状態です。
そのときです。
「!!! な、なんだこれは…!」
百戦錬磨の大先生たちも、さすがの惨状に絶句。
町が…
ぐちゃぐちゃになってました。
有珠蛇行道路1
文字通り、ぐちゃぐちゃです。
地表に飛び出そうとするマグマは、
地下深くから大きな力で地表を押します。
これまで何もなかったところに
火山噴火に関わる物質(マグマとか、水蒸気とか)が、
地下から湧き出てくるのです。
元々あった地面にこれまでなかったモノが割り込んでくるわけですから、
元々あった地面は、横へどかされてしまいます。
どかされたものは、グチャッとなって集まります。
こうして、町はぐちゃぐちゃにされてしまいました。
ぐちゃぐちゃの町の背後で、
有珠山火山灰水蒸気を吹き出して、せせら笑っています。
有珠蛇行道路と噴煙
ちなみに、この地でとーっても有名なお土産「わかさいも」。
この工場は、このときの噴火の火山弾
天井が巨大な穴だらけになりました。
当然、稼働はできません。
というか、ここまで山に接近した場所では、
人は生きていられません。
ですので、特別な許可が下りた筆者たちでも、
工場の写真を撮れるほどに接近することはできませんでした。
そんな事業に致命的な痛手を負った「わかさいも本舗」が、
今もなお元気で営業しているのを知り、涙が出てきました。
筆者たち観測屋が対象とするのは、
被害者ではなく、現象そのものなのです。
そして、現象を把握しても人々を救うことは
その場ではできません。
ですから、「人の不幸を飯の道具にしやがって!」
と恨まれることもしばしばでしょう。
ですが、決して楽しんでなどいません。
現象に興味はあれども、実情に純粋な興味だけでは臨めない。
感情としてはものすごいジレンマにいつも苛(さいな)まれています。
社会的には目立たない噴火になってしまったかも知れません。
ですがこれら町の人々は、本当に自らの復興に努力し、
そして、火山も含めて心から町を愛し、
代々住み続けているのです。
ちなみに、洞爺湖温泉町が混雑している場合、
お隣の壮瞥町がお勧めです。
穴場です。
ウィンザーホテルみたいなのはありませんが、
何より、人々がキョーレツに温かい!
もちろん、温泉もあります。
人がそれほど多くないので、湖畔のベンチで、
全身で大自然を堪能できます。
書いていたら、筆者もまた壮瞥に戻りたくなりました。