恐竜が恐怖に震えた日(前編)
先日、知人から
「なんで恐竜って絶滅しちゃったの?」
と聞かれました。
筆者のなかでその理由は、実に常識的なことでした。
だから、聞かれたこと自体に驚いてしまいました。
前回書いた
「会社の常識は非常識」
は、こういうときにも思い出されますね。
さて、本題。
ここからの主人公は、
肉食恐竜の代表である、
T-Rexことティラノサウルスのレックスです。
今から6500万年前、
人間が誕生するおよそ6000万年も前のこと。
レックスがいつものように太陽光から暖をとるため、
草原でお昼寝してました。
するとそこへ、何やらいいニオイ。
ふと顔を上げると、
遠くの空に、飛行機雲のような何かが
地上に向かって延びてました。
目を地上にやると、
そこに傷ついた草食恐竜がいます。
その血のにおいが鼻をくすぐったのです。
ちょうどお腹が空いてきていたレックス。
食事のチャンスとばかりににじりよります。
そんながめついレックスの気配に、
草食恐竜が気がつきました。
逃げる草食恐竜。
追いかけるレックス。
レックスの方が圧倒的に足が速いです。
ズンズン、ズンズン進みます。
ドンドン、ドンドン、距離が縮まります。
食事はもう目の前です。
あとは首を伸ばせばガブリと食いつける距離に迫った、
そのときです!
猛烈な突風がレックスたちを襲いました!
レックスは、目の前の食事を忘れてただただ驚くばかり。
何が起きたのかと周囲をキョロキョロ見回すと…
遠くにもうもうとキノコ雲が立ち上がっています。
どうやらかなり遠くらしいのですが、
どんどん大きくなる様が手に取るようにわかります。
すると、辺りが突然暗くなってきました。
まるで、夏の夕立の前のような暗さです。
そして、雨が降る代わりに、
真っ黒の小さな小さな固まりが降ってきました。
空をどこまで追っても、あつーい雲が覆っています。
小さな黒い固まりがひとしきり降ると、
今度は空気がどんどん冷えてきました。
なんだか、とっても寒いです。
太陽光を浴びたいのに、どこにも陽の光がありません。
寒いから「そうだ、食事をしよう」と思い、
追いかけていた草食恐竜を見ると…
やけにやせ細った草食恐竜の倒れている姿が見えました。
肉がほとんどなくなってしまった草食恐竜は、
まったくおいしそうじゃありません。
困ったレックスはほかの獲物を探しに出かけました。
すると…いつもと違う光景に
ようやく気づきました。
「…緑がない!」
見渡せど、緑がありません。
草も、木も、花も。
気づけば辺りは氷のような世界です。
「大変なことになった…、この世界に何が起きたんだ」
レックスはひたすらさまよい歩きました。
歩いても歩いても、緑もなければ獲物もいません。
見えるのは、ミイラのごとくやせ細って死んでいる
同じ肉食恐竜の姿だけです。
寒い、暗い、お腹すいた…
さすがのレックスも、もう限界です。
気づけばガリガリに痩せていたレックス。
陽の光も食べ物もえることができず、
レックスはとうとうその巨体を
バタッと冷たい大地に横たえました…。
このおはなしは、空想です(当たり前)。
ですが、この時代に起きたことを簡単な物語にすると、
きっとこんな感じだったと思います。
この物語の、地球科学的な説明は後編で。
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