アナタもできちゃう!地震予測3 ―2018年版と2015~2017年予測の結果―

2019/04/29

滋賀県立大教授の小泉尚嗣さんから、「アナタもできちゃう!地震予測」の第三弾のお知らせがありました。
いや~、驚き。
この方法なら、アナタも簡単に「地震予知屋」になれちゃいます。
気になったアナタは、さっそくトライ!

(滋賀県立大教授・小泉尚嗣氏寄稿)
前回の報告(2016年3月)から2年以上経ってしまいましたが,前回と同様の手法で,2015-2017年の地震活動をもとに,2018年の各都道府県における震度4以上の地震の予測を行います.
2018年1年の予測と,各3ヶ月の予測です(実際は,2018年以降の任意の365日間および91日間の予測です).
また,後半で,同様なやり方で行った2015年,2016年,2017年の予測結果の検証も行います.

少し長いですがおつきあい下さい.興味を持たれた方は是非,自分でもいろいろアレンジして予測し,検証もしてみてください.

気象庁震度データベースを用いて,2015年~2017年の3年間に各都道府県で震度4以上の地震を記録した回数を調べると以下のようになりました.
熊本県で回数が多いのは2016年熊本地震が発生したためです.
前回は,東京・鹿児島で島嶼部とそれ以外を分けていましたが,今回は分けていません.
(各都道府県で震度4以上であった地震なので,その都道府県直下で起きた地震とは限りません.また,大きい地震だと,複数の都道府県で震度4以上になるので,地震が重複する場合もあることに注意してください.)

141回:熊本
30回:茨城
23回:福島,大分
20回:栃木
16回:北海道
15回:千葉,鳥取,鹿児島
14回:宮城
12回:青森,埼玉
11回:宮崎
10回:福岡
9回:岩手
8回:長崎
7回:長野
6回:東京,神奈川,佐賀
5回:秋田,群馬
4回:愛媛,山口
3回:広島,高知
2回:山形,石川,岐阜,大阪,和歌山,島根,岡山
1回:新潟,山梨,静岡,愛知,三重,京都,兵庫,奈良,徳島,香川,沖縄
0回:富山,福井,滋賀

3年間の日数(365日×2+366日=1,096日)を上記の回数で割れば,それぞれの都道府県(場所)について平均の地震発生間隔T(日)が出てきます(0回についてはTは無限大とみなし,下記の確率は0とします).

震度4以上の地震の発生がポアッソン分布に従う(=一定の頻度でランダムに発生する)とすると,t日以内に震度4以上の地震が1つ以上発生する確率は1-exp(-t/T)という簡単な式になります.
ここで,exp(-t/T)とは,e(自然体数の底:2.718281828・・・)の(-t/T)乗を意味します(この式の出し方については,前回の報告をご覧ください).
「一定の頻度でランダムに発生する」というのがわかりにくいと思いますが,サイコロが良い例です.
サイコロの目は,1回振るごとにランダムに出ますが,平均すると6回に1度同じ目が出ます.
たとえば「1」の目は,6回に1度の頻度で(一定の頻度で)ランダムに出てきます.

tに365日を入れれば,1年間の発生確率.91日を入れれば91日間(約3ヶ月)の発生確率が出てきます.

確率70%以上で「震度4以上の地震あり」という予測をし,
確率30%未満で「震度4以上地震なし」という予測をし,
確率30%以上70%未満で「不明(注意)」という予測を出すとすると,
(ご自分で予測されるときは,適宜この基準を変えてみてください.)
実際には、
3年で4回以上発生していると年間予測が「赤」になり,
3年で1回以下なら年間予測は「青」になります.
また,3年間で15回以上発生していると3ヶ月予測は「赤」
3年で4回以下なら3ヶ月予測は「青」となります.
計算はともかく,原理的には非常に単純なものと思ってください.

【計算の結果】

■2018年の1年間で震度4以上の地震が起こるかどうかの予測(図1)

[A1]1年間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県
24箇所24カ所で年間予測「赤」
熊本,茨城,福島,大分,栃木,北海道,千葉,鳥取,鹿児島,宮城,青森,埼玉,宮崎,福岡,岩手,長崎,長野,東京,神奈川,佐賀,秋田,群馬,愛媛,山口
[A2]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県・地域
14カ所14カ所で年間予測「青」
新潟,山梨,静岡,愛知,三重,京都,兵庫,奈良,徳島,香川,沖縄,富山,福井,滋賀
[A3]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域
9カ所9カ所で年間予測「黄」
広島,高知,山形,石川,岐阜,大阪,和歌山,島根,岡山

図1:2015-2017年の地震活動を元にした1年(365日間)の震度4以上の地震発生予測.図の作成には「白地図ぬりぬり」というツールを使用.他の図も同様.

 

■2018年の各3ヶ月間で震度4以上の地震が起こるかどうかの予測(図2)

[B1]91日間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県・地域
9箇所9カ所で3ヶ月予測「赤」
熊本,茨城,福島,大分,栃木,北海道,千葉,鳥取,鹿児島
[B2]91日間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県・地域
25カ所 → 25カ所で3ヶ月予測「青」
愛媛,山口,広島,高知,山形,石川,岐阜,大阪,和歌山,島根,岡山,新潟,山梨,静岡,愛知,三重,京都,兵庫,奈良,徳島,香川,沖縄,富山,福井,滋賀
[B3]91日間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域
13カ所13カ所で3ヶ月予測「黄」
宮城,青森,埼玉,宮崎,福岡,岩手,長崎,長野,東京,神奈川,佐賀,秋田,群馬

図2:2015-2017年の地震活動を元にした3ヶ月(91日間)の震度4以上の地震発生予測.

■2017年の予測結果の評価

さて,上記がどれくらい当たるのか(外れるのか),2014~2016年の地震活動から2017年の1年予測を行ったときの成績を示します.

図3:左図:2017年の1年予測(赤・青・黄は図1と同じ意味),右図:2017年の1年間で震度4以上の地震を記録した都道府県(白)と地震が起こらなかった都道府県(黒)

[A1]1年間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県()は26箇所で,そのうち16カ所で震度4以上の地震が発生しました.
[A2]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県()は9カ所で,そのうち1カ所では地震が発生し8カ所では地震が発生しませんした.なお,震度4以上の地震が発生しなかった都道府県は29カ所です.
[A3]1年間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県・地域()は12カ所で,そのうち1カ所で地震が発生し11カ所では地震が発生しませんでした
※地震が複数回発生したとしても1回とカウントしていることに注意してください.A1~A3のカウントの仕方だと震度4以上の地震は16+1+1=18回起きたことになります。

1年予測成績

適中率: 16/26=0.62
予測率: 16/18=0.89
安心率1: 8/9=0.89
安心率2: 8/29=0.28

予測を評価する指標
 適中率震度4以上の地震が発生すると予測した都道府県のうち、地震が発生した割合
 予測率:震度4以上の地震が発生した都道府県のうち、地震が発生すると予測した割合
予測を評価する指標
 安心率1震度4以上の地震が発生しないと予測した都道府県のうち、地震が発生しなかった割合
 安心率2:震度4以上の地震が発生しなかった都道府県のうち,地震が発生しないと予測した割合
・どの数値も高いほど成績が良いことを示します.
予測については評価しません.

適中率と予測率(予知率)は,1977年に地震学者の宇津が提唱した地震予測(地震予知)の評価の指標です.
「赤」予報をいっぱい出すと予測率は上がりますが,適中率は下がります.
絶対確実と思われるときだけ予報を出して当てると,適中率は上がりますが,予測率は下がります.
地震予報(地震予知)が有効かどうかは,適中率と予測率の両方を見なくてはいけません.

続いて,2017年の3ヶ月予測の成績です.こちらについては煩雑になるので図示しません.

[B1]3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が70%以上の都道府県()は11カ所でした.1-3月,4-6月,7-9月,10-12月の4クールそれぞれで赤予測をしたとして,震度4以上の地震が発生すると予測したのは44回となります.そのうち25回地震が発生しました.
[B2]3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が30%未満の都道府県()は23カ所でした。上記と同様に4クールそれぞれ青予測をしたとして,震度4以上の地震が発生しないと予測したのは92回となります.そのうち90回は地震が発生しませんでしたが,2回は発生しました.なお,4クールそれぞれでカウントすると、震度4以上の地震が発生しなかった都道府県は151カ所でした.
[B3]3ヶ月間で震度4以上の地震の発生確率が30%以上70%未満の都道府県()は13カ所ありました.上記と同様に,4クールそれぞれ黄予測をしたとして,不明(注意)と予測したのは52回となります.そのうち,地震が発生したのは10回でした.
B1~B3のカウントの仕方だと、震度4以上の地震は、25+2+10=37回起きたことになります。

3ヶ月予測成績

適中率: 25/44=0.57
予測率: 25/37=0.68
安心率1: 90/92=0.98
安心率2: 90/151=0.60

■2015,2016,2017年の各予測の評価

2015年以降、直近3年の地震活動によって翌年の地震を上述のように予測しています。
その結果である適中率と予測率の推移を、以下の表に示します.

表1 2015~2017年の1年予測の評価

2015 2016 2017
適中率 0.90 0.94 0.62
予測率 0.59 0.46 0.89

表2 2015~2017年の3ヶ月予測の評価

2015 2016 2017
適中率 0.75 0.75 0.57
予測率 0.53 0.29 0.68

1年とか3ヶ月といったある程度長い間隔で,震度4以上の地震といった発生頻度の高い地震を対象とする
このような2つの条件を満たすと簡単な方法かつかなりの確率で誰でも地震が予測できるということを知ってもらえたらと思います.

参考文献
小泉尚嗣・今給黎哲郎,2016,震度データを用いた地震の中期予測 -地震発生の「相場観」を理解してもらうために-,地震ジャーナル,62,35-40.
小泉尚嗣,2017,あなたにもタダでできる地震予測,日本地震学会広報誌なゐふる,109,4-5.